2025年07月07日公開
近年、木造建築の価値が再評価されています。木材は再生可能な資源であり、温もりのある風合いや優れた調湿性を備えていることから、住宅にとどまらず、オフィスや 商業施設など非住宅分野でも活用が進んでいます。そうした流れの中で、防火性能を確保しながら木材を「見せる」設計を可能にする手法として注目されているのが、「燃えしろ設計」です。
木材は火災時において、鋼材などに比べて強度の低下が緩やかで、表面が燃えると炭化層が形成され、内部への酸素供給を遮断することで炭化の進行を遅らせる性質があります。この特徴を活かし、火災時に失われると想定される厚み(燃えしろ)をあらかじめ加味して部材断面を設計するのが「燃えしろ設計」です。
図1:イメージ図
構造体として必要な断面寸法に、燃えしろ分を上乗せして設計します。原則として準 耐火構造に限定され、火災が終了するまで耐えなければならない耐火構造や耐火建造物には適用できません。屋外の柱や梁、屋内の化粧梁など、木材をあらわしとする構造部材が主な対象です。 Port Plus(設計:株式会社大林組)では、木造の耐火仕様としては、木材の構造部、石膏ボードによる燃え止まり層、そして木材表面の燃えしろ層という木表面材の三層構 成とする個別大臣認定技術の「オメガウッド(耐火)」を採用しています。
図2: Port Plus
出典: 大林組, 日本初の高層純木造耐火建築物「Port Plus®」(次世代型研修施設)が完成
https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220520_1.html
図 3: オメガウッド(耐火)
出典: 大林組, #5 Port Plus 大林組横浜研修所
https://www.obayashi.co.jp/works/focus/article-05.html
都市部においても中高層の木造建築が増えつつあり、木材の魅力を活かした空間づくりがますます注目されています。そうした木質空間では、建築意匠との調和を図るため、設備機器のデザインも重要なポイントです。床下空調を採用することで、内装や天井に木材を多く使用でき、建物のデザイン性と快適性を両立させることが可能です。 当社では、木材の質感や色味に合わせた着色仕上げ対応が可能な床吹出口を取り揃えており構造や性能はそのままに、仕上げ色を木材と統一することで、意匠と空調機能の両立を図ることができます。 木質空間での採用実績も増えておりますので、詳細は弊社納入事例をご参照ください。
・山辺豊彦(2025)『建築の仕組みが見える 05 力の流れがわかる木構造入門』エクスナレッジ
・株式会社大林組-日本初の高層純木造耐火建築物「Port Plus®」(次世代型研修施設) https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20220520_1.html
・国土交通省-防火被覆の効果を考慮した燃えしろ設計法の合理化に資する検討 https://www.mlit.go.jp/common/001129580.pdf
・画像提供:株式会社大林組