2025年11月27日公開
ライブ会場は、音楽やパフォーマンスを通じて人々が感動を共有する場所です。そこには、高齢者や障がいのある方、子ども連れの家族など、さまざまな背景を持つ人々が訪れます。
だからこそ、誰もが快適に、安全に、そして平等に楽しめる空間づくりが求められています。
このような考え方を形にするのが「インクルーシブデザイン」です。
今回は、ライブ会場で取り入れられているインクルーシブデザインな設計の工夫についてご紹介します。
英国王立芸術大学院の名誉教授であるロジャー・コールマン氏は、1994年の論文で「インクルーシブデザイン」を提唱しました。
インクルーシブデザインとは、できるだけ多くのユーザーを包含し、かつ、利益や顧客満足などのビジネス目標に対して有効なデザインを目指す考え方です。
バリアフリー法(正式名称:高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)では、建物や公共空間の整備設計基準が定められています。廊下や階段の寸法、勾配、手すり、トイレなど、ハード面の詳細な基準を遵守しながら設計が進められています。
1. 段差のない導線
エントランスから客席まで、スロープやエレベーターを設置することで、車椅子利用者やベビーカー利用者もスムーズに移動できます。
事例:新国立競技場では、設計段階から障がい者団体や子育て世代の声を取り入れ、段差のないアクセスルートやエレベーターの配置が徹底されました。
2. 車椅子スペースの確保
ステージが見やすく、ライブの一体感を感じられる位置に車椅子スペースを設けることが重要です。同行者が隣に座れる設計もポイントです。
3. 視覚・聴覚支援
点字案内、音声ガイド、手話通訳のスクリーン表示など、感覚的なバリアを取り除く工夫も不可欠です。
事例:Beyond Music Festival(大阪・服部緑地野外音楽堂)では、視覚・聴覚に障がいのある人も安心して参加できるインクルーシブな音楽フェスとして、リアルタイム字幕、手話通訳やコンシェルジュサービスを導入しています。
4. トイレの設計
多目的トイレやオストメイト対応設備の設置は、安心して長時間滞在できる環境づくりに欠かせません。
事例:東京オリンピック関連施設では、150cm×150cm以上の広さを確保した多機能トイレが整備され、誰でも使いやすい設計が実現されています 。新国立競技場では、補助犬用トイレの設置がされています。
5. 避難計画
災害時に障がい者が安全に避難できるよう、避難ルートの明示やスタッフの訓練も重要です。
事例:新国立競技場では、補助犬用トイレの設置や避難誘導の多言語対応など、細部まで配慮が行き届いています 。
ライブ会場の設計は、単に音楽を届けるだけではありません。それは、「誰もがその音楽に触れられる」ことを可能にする空間をつくることです。インクルーシブデザインは、音楽を通じて「その場にいる」ことの喜びをすべての人に届けるための建築的な配慮となります。
丸型床吹出口は床材を加工することで床面を面一”にすることが可能です。
茨木市文化・子育て複合施設 おにクルでは、インクルーシブデザインの理念に基づき、誰もが快適に利用できる空間づくりが実現されています。丸型床吹出口が採用することで、床面をフラットに保ちつつ快適な空調環境を提供しており、視覚的・物理的なバリアを軽減する工夫が施されています。
内閣官房(2020),ユニバーサルデザイン2020 資料集(街づくり),
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/ud2020kaigi/machizukuri_dai3/sankou1.pdf
国土交通省(2021),様々な障害等当事者が参画した施設整備等に関する事例集,
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001748717.pdf
国土交通省(2025),
高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した 建築設計標準
001892119.pdf
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(2017),Tokyo 2020 アクセシビリティ・ガイドライン,
https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/5b71b6a2ab75f7d152a43f422348529c_1.pdf
株式会社竹中工務店, 竹中工務店のインクルーシブデザイン
https://www.takenaka.co.jp/inclusive_design/
株式会社久米設計, バリアフリーデザインの実践 ダイバーシティ&インクルージョンのために出来ること デザインストーリー,
https://www.kumesekkei.co.jp/designstory/barrier_free.html
株式会社PR TIMES(2025),「障害のある人も楽しめるようにデザインされたインクルーシブな音楽フェスティバル「Beyond Music Festival 2024」 11月2日開催」, PR TIMES.
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000147604.html