第11回:置換換気方式の特徴

2021年08月23日公開

置換換気方式の原理

置換換気方式は1980年代から北欧を中心に採用が進み、現在は欧州全域において、オフィス・劇場・工場において広く採用されるに至っています(弊社が取り扱う置換換気吹出口は一般用と工場用で分けておりますが、置換換気方式の原理自体は同じです)。その原理は風速を抑えた給気を送り込み、室内の熱源(人体、照明、電気器具等)の自然の上昇気流を利用することです。従来の全体をかき混ぜる方式(乱流混合方式)、床吹出方式との違いは第3回コラム:従来方式とどう違うのか?、で述べておりますのでこちらも併せてご参照下さい。

通常、置換換気方式は部屋の換気と冷房に用いられます。暖房は、特別に設計された置換換気吹出口に限って可能です。

 

 

置換換気方式の気流パターンは上図1に示す通りです。室温より低温で、乱流成分を含まない給気が極めて低い風速(通常は0.2m/s以下)で大きな面積の置換換気吹出口から送り込まれ、床面に沿って薄い層状に広がります。吹出口の高さと室温と給気温度の差に応じて給気は沈み込みます。これによって風速は上がり吹出口から約0.5m~1.5mの距離で最大風速Umaxになります。この風速は吹出し風速U0より大きくあることもあります。その後、風速はだんだんと小さくなり、吹出口の近接域の外側の温熱環境を作ります。近接域の大きさは吹出口の種類、風量、給気と室温の差によって決まります。

 

置換換気方式での汚染物質と温度勾配

 

 

上図2に例として、熱源付近で発散されている汚染物質(タバコの煙や二酸化炭素等)がどうなるかを示しています。これらの汚染物質は熱源の上で発生している上昇気流で天井域まで持ち上げられ、ほとんどは排気と共に捨てされられます。わずかに空気の沈み込みと共に、室内に戻ってきます。その結果、室内の下部に位置する清浄空気のゾーンにはほとんど汚染物質はなく、居住者は新鮮度が極めて高い空気を呼吸することができます。

 

室内の汚染物質に関する成層が出来るのに加えて、上図3に例として示したように温度も勾配を作り出します。床近傍で給気が暖かい床と室内空気とのわずかな混合によって暖められます。これが、床近傍で給気温度よりも温度が高くなっている理由です。室内全体を垂直方向に見ると床面から温度が徐々に上昇し、熱源近くを除くと天井付近が最も高い温度になっています。

 

 

次回はこの置換換気方式の工場・生産施設への適用について紹介致します。