第3回:従来方式とどう違うのか?

2020年11月16日公開

吹出方式の違い

前の記事で床吹出方式と置換換気方式について簡単に説明しました。では従来の吹出方式とどう違うのでしょうか?

一般的なこれまでの吹出方式は「乱流混合方式」とも呼ばれています。一般的には天井に設置された吹出口から高速の気流を吹出して部屋全体の空気を撹拌し温度を均一化することを狙っています。

一方、床吹出方式や置換換気方式は人が滞在する居住域(一般に1.7m高さまで)を中心に空調を行いそれ以上の高さについては熱溜まりとなって良い、という発想の方式です。

人体やOA機器は熱を持っているので自然な上昇気流が起きます。その自然の力で熱や汚染物質は居住域から追い出そう、天井近くに追いやってしまおう、という考え方です。

各吹出方式の飛沫濃度分布

イギリスの雑誌に掲載された面白いシミュレーションをご紹介しましょう。これは飛沫が座った人間の口から出た場合、飛沫がどのように部屋高さごとに分布するかをコンピュータ・シミュレーション(CFD)を行ったものです¹⁾

MVが乱流混合方式、UFADが床吹出方式、DVが置換換気方式ですが、これを見ると床上1.4m(座った人の口のあたり)までの範囲では床吹出方式と置換換気方式のほうが5ミクロン以下のエアロゾル飛沫の濃度が少ないことがわかります。(16ミクロンのいわゆる飛沫については重力の影響があり、濃度分布に差がみられません)。

このように床吹出方式や置換換気方式には「居住域のエアロゾル飛沫を減らす可能性がある吹出方式」ということができます。

 

1)Building andEnvironment誌2011.11月号「CFD study of exhaled droplet transmission between occupants under different ventilation strategies in a typical office room」

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7119025/