2020年12月25日公開
さて、このコラムですが、吹出し方式についての説明は一旦お休みして
新型コロナウィルスのエアロゾル感染を極力防ぐための換気の目安について考えてみたいと思います。
「三密を避けるために換気に気を配る」と言われても「どうやって換気が十分と判断するの?」というのが素朴な疑問だろうと思います。欧米ではすでにCO₂濃度をモニターすることで換気の十分・不十分を判断することが行われています。
ではなぜ、室内空気のCO₂濃度を測ることで換気の状況がわかるのでしょうか?
人は呼吸することで空気中の酸素を取り込み、吐気と一緒に二酸化炭素を排出します。新型コロナウィルスのマイクロ飛沫も吐気と一緒に排出されるので、部屋の中のCO₂濃度が高ければそれだけ(新型コロナウィルス感染者がいたとすれば)マイクロ飛沫にさらされている可能性が高い、ということになります(同じ室内に火を使う器具が室内にあればCO₂を排出するので注意が必要です)。
CO₂モニターは市販されていて数万円程度で購入できます。
日本ではビル管理法において「1000ppm(0.1%)以下」が空調・機械換気設備を有する室内のCO₂濃度の指標になっています1)。
しかしこれは従来の一般的な環境衛生のための指標であって新型コロナウィルス感染を防止するための指標ではありません。
世界に目を向けてみると、欧州空調換気設備協会(REHVA)が「REHVA COVID-19 guidance document, August 3, 2020」2)というガイドラインを出しています。そちらでは「室内にCO₂モニターを設置しCO₂濃度が800ppmで黄色信号(警告)、1,000ppmで限界(すぐに換気を行う)」という目安が示されています。ベルギーでは教室にCO₂モニターを装備することとなり3)、アメリカ・ニューヨーク市では学校にCO₂モニターを配布し換気状況を確認することが計画されている4)と報道されており、西村経済再生担当大臣も2020年11月8日のツイッターで「CO₂センサーなどを活用したモニタリングと換気の実施」をこの冬のコロナ対策項目としてあげています5)。
現在、政府内閣官房の「AI等シミュレーション開発チーム」においても「CO₂濃度の計測値に基づく換気状況の測定」が研究開発テーマに挙げられている6)ことから、我が国においても何らかの指標が示されることが期待されます。指標が明確化することで飲食店も「当店は換気がしっかりできている安心できるお店です」とお客様に安全性を訴えることができ、経営的に大きなプラス効果が期待できると考えます。
文献・引用:
1)厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/
2) https://www.rehva.eu/fileadmin/user_upload/REHVA_COVID-19_guidance_document_V3_03082020.pdf
3)The Brussels Times 2020.8.27号
Schools urged to keep doors and windows ‘wide open’ to cut risk of Covid-19 infection
4)CBS New York 2020.8.25号
Mayor De Blasio Announces Formation Of New School Ventilation Action Teams
5) https://twitter.com/nishy03/status/1325825882670313473
6)https://corona.go.jp/prevention/pdf/advisory_siryou_20200907.pdf